感情もろ出しの人間そのもの。

ロコツなまでの本能むき出しね。

更年期障害でホルモンバランスが崩れてるんじゃない?

婦人科行ったら?


「わらわは・・・真の神の母なるぞ!」

ぎらりと鋭い目で睨み、怒鳴り声を発する奥方。

興奮して、肩と胸が激しく上下している。


門川君がいつの間にか上体を起こして、その姿を黙って眺めていた。

こんな様子の奥方は、今まで見たことが無いんだろう。

だだっ子のように扇子を畳に叩き付ける姿を、彼は呆然と見ている。

・・・どこか、哀れみのこもった目で。


「わらわは神の母! 選ばれし特別な存在!」

奥方は叫び続ける。


「門川の正妻となり、子を産み、当主の座に就かせるが我が使命! 宿命!」

誰に向かって叫んでいるのか、その目は宙を泳ぐ。


「神の御意思、天の定めじゃ! それは絶対に成されなければならぬ!」

焦点の合わない視線が、あちこちと動く。

とてつもない不安に駆られているかのように。


「でなければ・・・」

どこか・・・泣き出しそうな目。


「わらわがこの世に生まれた価値など無いと、一族の全員に教わった!」