神様修行はじめます! 其の二

ハシゴを上り、地上に出た。

庭木や草花がうっそうと周囲を覆い、目隠しになっている。


そっと辺りの様子を伺った。


外はもう夜で、すっかり闇に染まっていた。

人影はない。

草木に紛れて進めば、きっと誰にも気付かれない。


「小娘、この先、滅火の力は使うなよ」

「えっ?」

「この敷地内で力を発動すれば、瞬時に感知されてしまう」

「そ、そうなのっ?」

「取り囲まれて一網打尽じゃ。よいな? 決して使うでないぞ?」


絹糸が、しつこいくらい何度も念を押した。


「決して決して使うでないぞ?」


分かったってば!

でも、そういう事は早く言ってよ! 出発する前に!


力が使えないなんて想定外だよ。


どうしよう。こんな事なら武器を調達してきたのに。


武器ったって、権田原には鍬とか鎌とかしか無いけど。


なんだか、たちまち心細くなってきた。


気持ちを奮い立たせて、先を歩く絹糸に着いて行く。


ここから先は、奥方の住む別棟の敷地だ。

引き締めて行かないと。