神様修行はじめます! 其の二

自分の弟を守ろうって気があるの?

あるんなら、とっくに動いててもいいはずだ。


だって「処刑宣告」って話までになっちゃったのに。


なのに、鬼ババの影に隠れて、なんの働きかけもしようとしてない。


たぶん、お兄さんは奥方の言いなりなんだ。


母親に逆らえない、典型的なマザコンタイプだ。きっと。


お兄さんが悪いっていうよりも・・・。

あの女の子どもに生まれてきてしまった、身の不運だと思う。


虐待されてる子ほど、親に逆らえないで従順だっていうし。


ひょっとしたら、心配して心を痛めてるのかもしれない。


でもだからといって、何か行動を起こす事もできない。


そんなヘタレ君な状態な気がする。



「穏やかな気性なだけに、望みは薄いぞ」


絹糸が、あたしの考えと同じ事を言った。


「兄上は本当にお優しいお方だった・・・」


門川君はそれに答えず、独り言のようにつぶやいた。


ぼんやりと、目の前の紅茶の湯気を見つめ続ける。

まるで、その向こうにお兄さんがいるかのように。


思い出を噛み締めているように。


「弟思いのお方だった・・・」