返事が返ってこない。
それが私の不安をよりいっそう駆り立てる。
「橘さん?」
『………ごめんな』
「何で…何で橘さんが謝るの?」
『今、事務所の人に迎えにいってもらってるから、事務所に来て』
「えっ、ちょっ……」
私の返事も待たずに切られ、呆然とする。
だって…
橘さんが私にキスなんてするはずないのに。
なんで否定しないの…?
「姉ちゃん…」
遥希の声で我に返り、テレビを見る。
『今話題の現役女子高生女優、甘地心愛さん17歳に熱愛報道です』
『お相手は甘地さんのマネージャーさん25歳』
『なんとこのマネージャーさん、17年前子役として活躍していた神崎雅人さんなんですね』
『いやー、まだ心愛ちゃんは未成年でしょ?
それはちょっとねー(笑)』
コメンテータさん達が遠まわしに橘さんを責める。
なんで…
なんであんなこと言われなきゃいけないの…。
「姉ちゃん…事務所の人きたよ」
トントンと肩をたたかれ、振り向くと事務所の社長の秘書さんが立っていた。
遥希と柚花も乗せ事務所に向かう。
2人を預かってもらい、私は直接社長室に向かった。