「10分後本番いきまーす」
スタッフさんの声でセットから出て、セリフを確認する。
「あの距離恥ずかしい?」
いきなり耳元で囁かれ飛び跳ね、振り向くとニヤニヤした中原さんがいた。
「恥ずかしいってゆうか……本番は大丈夫なんですけどリハはちょっとだけ…(笑)」
「俺本番ではもうちょい抱きしめようかなって思ってんだけど平気?」
「っ////
だ…大丈夫ですよ」
「あいつも?」
いきなり話が変わったように思えて頭の中が混乱する。
「マネージャーさん、怒らない?」
「橘さん…?」
なんで中原さんは橘さんをそんなに気にするんだろう。
「お芝居なら怒らないと思いますよ」
「ならいいけど」
そう言いながら中原さんはスタジオの隅にいる橘さんを見る。
「いつまで余裕でいられるかな?」
そう中原さんが呟いたのを私は気づけなかった。

