『短編』甲子園より、愛をこめて





7回表1アウト1塁3塁。


1塁の選手がホームに戻れば、逆転される場面。


このピンチの中、彼は今、どんな表情をしているのだろう。


3塁側のアルプススタンドからは、彼の背中しか見えない。


背番号1が、やたらと大きく見える。


彼が投げた球は、心地よい音とともにセンターの奥深くまで飛んで行き、1塁にいた走者がホームインしてしまった。


1塁側のアルプススタンドから、割れるような歓声が上がる。




がんばれ!




わたしは、いたたまれない気持ちで、背番号1を見つめた。