呼び出された校舎裏で、



「こんなこと、言う権利、ないかも知れないんだけど……」



そう前置きされてから、言われた言葉。



「叶太くんを解放してあげて!」



最初、何を言われているのか、分からなかった。



「……あの」



戸惑うわたしに、その子は思い詰めたような顔で続けた。



「もう、いいでしょう!?」

「……え、っと」



叶太、広瀬叶太(ひろせかなた)。カナ。

わたし、牧村陽菜(まきむらはるな)の幼なじみ。

家も隣で、幼稚園から、高1の今まで、ずっと一緒の男の子。



「いつまで、縛り付けるの!?」



わたしに詰め寄る、その子も、

ほとんど話したことはないけど、私立一貫校の、幼稚部からずっと一緒だった子。

田尻真衣(たじりまい)さん。



「あの……、田尻さん?」



訳が分からないといった顔をしたわたしに、田尻さんは、怒りをあらわにして、叫んだ。



「叶太くんが、なんで、あなたのことを、あんなに世話を焼いていると思ってるの!?」