白い天井と、愛想のない蛍光灯が目に入り、自分がどこにいるのかを思い出した。



保健室。



体育の時間、見学はやめて、寝かしてもらうことにしたんだ。

時計を見ると、4時間目が終わるまで、後数分という時間。



起きなきゃ。



そう思うのに、重い身体は、

いいじゃない、昼休みまで寝ていたら、

とささやく。



だけど、薬、飲まなきゃ。

お弁当はともかく、薬だけは飲まなきゃいけないから。



それに……

わたしが教室に戻らないと、きっと、カナがお弁当と薬を届けてくれる。



また、カナに面倒をかけてしまう。



ムリヤリ、身体を起こすと、めまいがした。

一瞬、このまま早退しようかとも思う。



ダメだ。

どっちにしても、一度、教室に戻って鞄を取ってこなくちゃ。



ゆっくり、身体を起こしている間に、チャイムが鳴った。



「あら、牧村さん、戻るの?」



養護の先生に声をかけられる。



「はい」

「……顔色悪いわよ。お昼休みは寝ていた方がよくない?」



それに、なんと答えようかと思っていると、保健室のドアがノックされた。



カナ!? もう!?



いくら何でも早すぎる。

体育の後だもの。

これじゃあ、着替える時間がまったくない。



瞬間的にそう思い、ホッとした。



カナのはずがないと思って、ホッとする。



そんなことで、ホッとする自分が、イヤになる。



カナの声を聞きたい。

カナの笑顔が見たい。

カナと前のように、おしゃべりしたい。



そう思ってしまう弱い自分は、もっとイヤだった。



カナじゃないはずだとホッとしたはずだったのに、



入ってきたその人の姿を見た瞬間、わたしの心は凍りついた。



たぶん、わたしが、今、一番に会いたくない人。





……田尻さん。