慣れた手つきで、優雅にお茶を注ぎ、ケーキを並べながら、
「お二人とも、同じクラスなのでしょう?」
と、広瀬のお母さん。
「はい」
寺本とオレの声が重なる。
「陽菜ちゃんも一緒よね?」
笑顔で聞かれて、オレは一瞬、ドキッとしたのに、寺本は平気で、
「はい! 仲良しです」
と、にっこり笑って答えていた。
いや、別に、何も後ろめたいことはないんだけど……。
「陽菜ちゃんも一緒に遊びに来られたら、いいのだけど」
と言いながら、お母さんの上品な笑顔が曇った。
「え!? ハル、どうかした?」
素早く反応する広瀬。
「調子が悪いんですって」
お母さんは、ティーカップを配る手を止めた。
「昨日、クッキーが美味しく焼けたから届けに行ったのだけど、寝ているからって会えなかったわ。
響子さん、心配してたけど、大丈夫かしら?」
響子さん?
「あ、響子さんって、ハルの母さん」
広瀬が、オレと寺本のために注釈を入れてくれた。
「それで? どんな具合なの?」
「あら、あなた、知らないの?」
と聞き返され、広瀬は苦虫をかみつぶしたような顔になった。
オレたちはその表情の理由を知っているけど、お母さんは知らないらしい。
「後でお見舞いに行ってらっしゃいな」
「……あ、うん」
歯切れの悪い広瀬。
それを見て、お母さんは首を傾げた。
きっと、いつもの広瀬の反応じゃ、ないんだろう。
「食欲がないみたいだけど、ゼリーなら喉ごしもいいし、食べられるんじゃないかしら?
陽菜ちゃんが好きな果物で作っておいてあげるわ」
そう笑顔で言うと、広瀬のお母さんは、優雅に会釈して、部屋を出て行った。
少しして、お母さんの出て行ったドアに目を向けたままの寺本が、
「……ホント、家族ぐるみのお付き合いなのね」
と、感心したように、ホウッと息を吐いた。



