感想ノート


  •  月に一度の楽しみである某有名洋菓子店のシフォンケーキを堪能していると事務所のドアがノックされた。「開いてますよ」との返事に現れたのは意外な訪問者だった。十年前に別れた女。彼女は再会を懐かしむ挨拶も無いままに三日後、N県のS港まで自分を送り届けて欲しいと依頼してきた。
    「ウチはタクシー会社じゃない」
     俺の返答に彼女は十年前と変わらぬ気の強さで睨み付けてきた。しかし十年前と違っていたのは、怒って俺の前から立ち去る事は無く、再び頭を下げて護送を願い出てきた点だった。
     三日後、指定された待ち合わせ場所に行き彼女を拾うと俺はさっさと高速に乗った。
    「相変わらず甘い物が好きなのね」
     彼女が笑いながら喋り出した。その瞬間、俺は急ハンドルを切り強引な追い越しを行った。彼女の身体が激しく左右に振れた。彼女は俺を睨み付け文句を言おうと口を尖らせた。
    「軽口は嫌いなんだ。それに……つけられてる」
     俺の一言に彼女の表情が強張る。俺はバックミラー越しに車二台分の間隔で後ろを走る黒い高級車を確認して舌打ちした。
    「何も聞かないのね」
     彼女は俺から目を逸らし呟いた。
    「非合法な政治活動に手を染めてるらしいな」
     俺はそれだけ言うと煙草を咥えた。俺のポンコツは限界速度を越え、エンジンは悲鳴を上げる回転数に達していた。最寄のインター出口が間近に迫ってきた。俺は唐突にギアを入れ替えた。ポンコツが荒馬の様な激しいノックを起こして速度を落とす。ブレーキランプの点灯しない突然の失速に追跡車が俺達を交わして追い越した。そのまま俺達は乱暴にインターを脱出した。
    「そこまで知って、何故、依頼を受けたの?」
     彼女が口を開いた。
    「惚れた女が昔の男に頭を下げた。女の願いを聞くのにそれ以上の理由は必要ないだろ」
     彼女はジッと窓の外を見ていた。その表情は見えない。窓の外には一筋の飛行機雲。咥えたままの煙草にようやく火を点す。
    「何か書く物ある?」
     俺は「さあ」と首を傾げた。彼女は暫し思案するとダッシュボードを開いた。そこに突っ込まれていた読み掛けの文庫本を取り出すと「変わってないのね」と笑って文庫本に挟まれた栞を取り出した。その栞に何かをメモして彼女は俺の胸ポケットにその栞を挿し込んだ。
    「連絡待ってるわ」
     俺は彼女と目的地までのドライブを愉しむ事にした。

    矢野 克彦 2009/05/01 16:52

  • ねもたん〉

    そうか…書き分けかあ…

    重くしたいのに軽くなったのはそのせいか…

    描写削り過ぎかな?

    疾風雷神 2009/05/01 00:14

  • あと、紅憐ちゃんは、私と真逆タイプか・・・。

    かくいう私も、昔の作品は女性が主人公ばっかりでした^^;


    これ、今の私の作風から行くと、信じられない気がしなくもないが・・・昔はホントに男主人公かけなかったんだよな・・・。


    人間、変わるものだ。


    あ、紅憐ちゃんへの感想は、ちょっと明後日ぐらいに、言います。

    ごめんね。

    ねもやん二号 2009/05/01 00:11

  • では、雷神さんからは私が少しだけ・・・

    雷神さんの手法はありだと思うよ。私は。

    というのも、私自身も会話を中心として、風景描写をあまり書かない傾向があるからね。

    コレは、私自身が、風景描写が苦手というのも上げられるけど、実際風景描写が延々と続く作品は疲れてしまうからというのも上げられるのだよ。


    どうしても、小説は漫画と違って、セリフと、動作を分けないといけないから、そこのバランスを上手く取らないと、難しいよね。


    でも、雷神さんの欠点だと私が思うのは、雷神さんは、書き分けがもう少ししたらどうかな?って思ったりするところかな・・・。


    例えば、ジムは優秀な機体で、戦う場所を選ばないけど、陸地で戦うなら、陸戦ジムの方が適しているでしょ?

    って感じかな?


    雷神さんの作品は、私の印象だけど、どれも似たようなイメージを受けるのだよね。


    コレは、文章の書き分けがまだ、甘いのかな・・・って感じたりもするのです。


    暗い話には、それに適した文章を。


    明るい話には、それに適した文章を心がけると、あ、これはこういう話なんだな・・・って気がして、いいと思うよ。


    まぁ、私の主観だけどね。






    あと、やけどさんの長編の話が出たけど・・・


    長編は長いと思われたら負けなのだよ!


    では、長いと思われないためには、どうすれば良いのか!

    そんな方法あったら、私が知りたいよ!!

    ねもやん二号 2009/05/01 00:07

  • ぐりぽん〉

    折角のイベントだから何か書きたいし、自分が書こうとしたものが伝わってるのか感想を聞きたいなと。

    手厳しい意見が来ると、思ってたんだけど。

    疾風雷神 2009/04/30 22:02

  • ●(いろいろ試してます)(っていうか●分が以外に邪魔という……)

    紅 憐 2009/04/30 15:17

  • がりっ。

    「ちょっ、待ておい!? 今俺の歯が異常な音をあげたぞ!?」

    「えっ!?」

    と、一緒になって目玉をひんむくのは、家庭用アンドロイド一万飛んで三百飛んで四号、わかりやすく言うと10304号だ。

    「ななっ、なにかわたくしっ、また失敗を!?」

    ひどく狼狽したメイドスカートのフリルが、わたわた跳ねる。

    「なにか失敗をじゃねぇよ!?」

    がりっ。の正体を確かめるべく、口の中へ手を入れ……出てきたのは醤油ビンの蓋だった。

    「はっちょっ、待てよ!? なんでシフォンケーキ作ってて醤油ビンの蓋!? わけわかんねぇよ!?」

    「あぅわわ、すみませんっすみませんっ、私また失敗を」

    家庭用アンドロイドが普及して久しい今、なぜか我が家のだけが、『ドジ』なのだ。

    「っていうより異物混入だろ!? いやっ、むしろなぜ醤油ビンの蓋!? お前、シフォンケーキの作るのに醤油いるのか!?」

    「はっ、はい! 生地に入れるべきかどうか悩みました!」

    「なぜ悩む!?」

    「日本の調味料といえば『せ』のおしょ」

    「シフォンケーキは洋菓子じゃっ!!」

    「あぅわわ、すみませんっ」

    へこへこ謝る動きに合わせて、フリルがばさばさ、長い三つ編みがばたばた。

    「ったく」

    適当に切り上げ、今日買ってきた文庫を手に取る。本を開いて気が付いた。

    「うあ、やべ」

    「どうされました?」

    「学校図書に俺の栞挟んだままだよ……あー、どうしよ」

    このままでは、本に栞が挟めない、読書がやめられない。俺の栞はその、あの子に選んだもので、ほかの栞に浮気はできんのだ。

    「学校! わっかりました、任せてくださいっ!!」

    「へ?」

    いきなり意気込む10304号。その背中が突然開き、銀色のランドセルみたいなのが現れる。がしゃんっ! と続いて翼が!?

    フゥィンというエンジン音をあげながら、10304号はにこやかに、

    「取って参りまっす!!」

    「いや待っ」

    どーん! とジェットを噴射し、10304号は飛び出した。家の天井に、大穴を開けて。

    「っ、ばっきゃろー!!」

    俺はドジアンドロイドが残す飛行機雲へ怒鳴るしか、なかった。

    紅 憐 2009/04/30 15:16

  • ↓●ずるいことやっちまったいです。

    まあ息抜きもかねて♪

    紅 憐 2009/04/30 14:48

  • 事務所に入ると、彼女はデスクの上でうつ伏せになっていた。呼びかけても返事がない。彼女の背後で、『探偵事務所』という白テープが、『事』と『務』で重なっている。つまり窓が開いている。まさかを予想した僕は、微動だにしない彼女へ駆け寄った。

    「――なんだよ」

    と、本気で悪態をついてやった。彼女は、ただ眠っていた。栞の挟ま――れてない文庫を片手にしたまま、器用に。

    なにも羽織っていない彼女。ブラウスの背にはうっすら、ブラのホックが透けていて焦った。いろんな意味で、僕のジャケットをかけてやる。

    そこで一言。「覗きですか」と、窓の外へ。

    電線に、一羽の烏がとまっていたのだ。そいつは、くりくりした目玉をじっとこちらに向けたまま、真っ黒い嘴を開いた。

    「おや、ばれていたかね」

    と、発せられたのは、『カー』じゃなくて人語だ。妙にキーキーした声だが、人を見下したような調子で喋る知り合いはひとりきりだ。

    「なめてもらっちゃ困りますよ。僕は、彼女の助手です」

    「自称ではないのかね」

    「残念。今回ので正式認可してもらいました。――なにか用ですか」

    烏がくり、と首を動かして横を向いた。また、くり、とこちらへ。

    「用というほどはない。ただ、飛行機雲に引き裂かれてしまった空がその後、どう青へ戻るか気になってな」

    「アナタには関係ないです。依頼人の情報は漏らしません。お引き取り願えますか」

    「そうかね」

    「ええ。そうでないなら、日頃彼女からシフォンケーキを作ってとねだられ、メレンゲ作りで鍛えられた僕の腕力が黙っちゃいませんよ」

    「おお、怖い怖い」

    かっかっかっ。烏が変な風に笑う。

    「あっはっはっはっ」

    と僕も、

    「だからね」

    笑顔を。

    「俺が笑ってるうちに失せろ!」

    ごう、と風が事務所の内側かは外へ溢れ、書類が舞い上がった。

    突風で烏が吹っ飛ぶ。落とし物の黒い羽が、ひらひら。

    ふん、と鼻息をついて、腰に手をやった。僕はヤツが嫌いだ。

    気付けば空の彼方には、白い線が見えた。

    そして気付けば、

    「ん……ぅっさいわよ」

    「すみません」

    起こしてしまっていた。

    紅 憐 2009/04/30 14:47

  • さ……あて

    雷神さんのについてなのですが、正直なところ、雷神さんがどのくらいの気持ちや感覚でかかれているのか、微妙に推し量れないんですよね。

    雷神さん、どうですか?

    紅 憐 2009/04/30 13:49

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