第一、天冥と話して何をするつもりか。

 もう一度、件の交渉を持ちかけるつもりか。

それとも、強き天冥に本物の憧れを持っているが故の行動か。


 少なくとも喧嘩だけは売っていないことを、清明は祈った。

 天冥の悪口を心底で叩いているのではなく、どちらかと言うとこの感情は、

泣き止まぬ赤子をどうにかするような思いに似ている。


 彼には悪いが、彼は言ってしまえば単純である。


 褒めればそれなりに喜ぶような素振りを見せたりもするが、喧嘩を売られれば、おそらく容赦はしないだろう。

喧嘩を売らずとも、侮辱されても容赦はしない。

いくら才能豊富な陰陽博士とて勝てはしないだろう。


――無事を祈るしかないが、気になるな。


 さすがは、悪く言えばお人よしの清明である。

寮の仕事よりもそちらの方が懸念で仕方が無い。


 途中で抜け出して様子を見ようかとも思ったが、なかなか隙が開かなかった。


《まあ、あんな小生意気な陰陽博士なら、天冥を相手に軽口を叩いても、おかしくはありませぬが》


 式神は主の心を察する。

蓬丸は冷然として、そして呑気に言ってのけた。