「自分から喧嘩を仕掛けておいて自分から敵に背を向けるとはどういうことだ!

どういう狼藉だ!」


 敵に背を向けぬという精神は、本来であれば武士のものである。

可憐な様子は台無し、年頃の娘とは思えぬ言動であった。


 弾かれた独鈷を拾い上げ、すっかり萎びてしまった様子で蓬丸は、今更になってうぉんうぉんと嘆いた。


「やっぱり外に出てきたのが間違いだった」

 
 そんなをことを言われても――。


 清明に返す言葉は無かった。