陰陽寮に入り、方術(ほうじゅつ)をいざ使うときになっても、どうしてか清明は首を横に振る。


清明は聡い童子のはずであった。


学業においても、周りの見習いたちよりも格段と覚えがいい。


しかし、その術を使うことはしなかった。


「あの蛙を潰して見せよ」


 と言っても、清明はうなづかない。


生き物を無益に殺めることを、この清明童子は忌み嫌っていたのだ。



「なんたることだ、これがかの陰陽師の名を継ぐものか。


同じ名でありながら、このような雲泥の差とは」


 陰陽師たちは落胆したが、清明は己の考えを曲げはしなかった。


 同じ名でありながら力が違いすぎる。


 伝説の晴明と、落ちこぼれの清明。


 周りは清明を「晴明の名に恥じるもの」として、「晴明の悪点」という、不名誉な名で呼ばれることになるのであった。