彼らが争った跡には、互いに生傷が絶えない。


それだから余計に余計に困っているのだ。


「天冥が現れなくなったのはかれこれ数か月前から――。

彼ならばひと月に一度は姿を現すのに」


「別によいではありませんか。平穏な日常が取り戻せて」


 敵のこととは言えど、冷たい物言いである。

 蓬丸は軽やかに跳び上がって、屋根に腰を掛けた。


「天冥が現れない日々こそ、大切にせねばなりませんね。

奴がまた現れたら、清明様はまた忙しくなってしまう」


 蓬丸からすれば、どんな妖かしよりも天冥のほうがよっぽど強靭な加害者のようなものだった。