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 今は昔―――。

 いいや、そうはいっても、ほんの十五年ほど前のことである。

 いづこの邸宅だろうか、上流貴族の屋敷ほどの豪邸ではないが、それなりに広い。

中流貴族かそこらの邸宅、と思われる。

 小袖のおなごが二人いる。

 齢は二人とも七つばかり。

 一人は背が高く、しかし髪の毛が荒れ放題だ。

 もう一人は背が低く、綺麗に梳かれた髪を元結いにしている。

 姉妹、か。

おそらく背が高いほうが姉で、背が低いほうが妹だろう。

背格好からして彼女らは相対的だが、一つだけ共通点がある。

 二人とも瞳が大きく、猫の如き眼である。

 蹴鞠をしていて転んでしまったのか、はたまた夕日に京と共に沈みつつある屋敷の隅に現れた

妖かしを怖がってなのか、背の低いほうの少女は、両手で顔を覆ってしくしくとすすり泣いていた。

 背の高い姉と思しき少女が、その妹らしき少女の肩に手を置き、何度も撫ぜて慰めてやっている。

「大丈夫よ・・・」

 困ったように、背高の少女は眉を下げた。

「私が、守ってあげますからね。だから泣かないで」

 背高は甘えるように、今まで他の姫と同様に守られてきた、背の低い少女の身を抱きしめた。


「あなたが泣かないように、するからね―――」










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