「あれ、藤沢さん、酔ってる?」

 話しかけてくれているのが、秋元だということは分かる。

「そんな飲んだかなあ? いつもくらいだと思ったんですけど」

 次は永井だ。

「あー……ちょっとあれじゃない? 今日はちょっと飲みすぎたのかも」

 池内は少し笑いながら言った。

「え、そうですか?」

 永井は池内に聞く。

「うん、ちょっと体調も悪いみたいだったしね」

「体調というか、気分?」

 秋元が池内に確認している。

「えっと、藤沢さんちって北方面だったっけ」

「僕が送ってくよ。今日実家帰るから」

 畑山がはっきりと公言する。

「いや、僕家北方面なんで僕が送ります」

 あそうだ、飲み会の後はたいてい永井と一緒に帰っている。

「永井君ち、どこ?」

 畑山が聞いた。

「僕、北中です、藤沢さんちはその奥ですけどそこまで送っても構わないですよ、僕は」

 永井らしいなと思いながらも、

「いいよ、僕北奥だから。永井君が降りた後は僕で大丈夫」

 ハッと目が覚めた。絶対、口止めされる!!

「あ、起きた?」

 秋元のことがしっかり分かる。良かった、大丈夫そうだ。

「永井君と畑山部長が一緒に乗ってってくれるって。良かったね」

 しかし、既にそういう話が確定しているらしい。

「タクシー代3分割でラッキー、ラッキー」

 秋元の隣の菅原は笑いながらそう言うが、

「タクシー代くらい僕が出すよ」

と、畑山はさらりと言ってのける。

「じゃあみんなで乗り込んで、一周回ろうか」

 という誰ともなしの声の声が聞こえたところまでは覚えている。