幕末オオカミ



月光に照らされた沖田の頭から、尖った灰色の耳が、現れた。


ノドは恐ろしいほどの低音でゴロゴロと鳴り、


その唇の隙間から、鋭い牙が、顔をのぞかせた。



「……!?」



黒かった目は、月光を受けて金色に光る。


もともと長い腕は一回り太くなり、爪があっという間に、長くのびた。


そして最後に。


袴の後から、ふさふさとした灰色の尻尾が現れた。



「も、もののけ……!!」



それを間近で見ていた浪士は、かろうじてそれだけを、ノドから搾り出した。


間違いない──


沖田の、その変わり果てた姿は。


文字通り、


壬生の狼。



だった。