幕末オオカミ



これ、現実かよ……。


こいつ、まるで鬼じゃん。


あたし、こんなやつを二回やってやろうとか思ってたわけ……?



沖田は、最後に残った敵の方に振り向いた。



「ひっ……」



屋根から逃走した浪士だ。


彼は刀を構えたまま、恐怖に顔をひきつらせ、ズリズリとあとずさった。



「今度は、逃がさねぇ」



沖田は、じりじりと距離をつめる。



「ひ、ひいいいい!!」



その触れたら切れそうな眼光に射抜かれると、浪士は腰を抜かし、その場にへたりこんでしまった。



「……お前も、武士のはしくれなら、刀を持て。
正々堂々、斬られて逝くがいい」


「ひいい、お助けぇ……」



相手は、完全に戦意喪失。


沖田はため息をつき、刀を懐紙でふき、鞘におさめた。



「おい、縄をもってこい……って、誰もいねぇんだっけか」



沖田はしぶしぶ鞘についていた提げ緒を解き、縄の代用にしようとした。


その時……