幕末オオカミ



「……!!」



加勢をしようと苦無を持った手は、少しも動かなかった。


その必要が、なかったんだ。


沖田は目にも止まらぬ速さで、一人の胴を払い、もう一人の刀を弾き、強烈な突きを繰り出した。



「ぐ、あぁ……!!」



悲鳴を聞き終わる前に、沖田は胸を突いた男の身体を、無駄に長い足で蹴飛ばしす。


刀をその体から抜くと、



「おせぇんだよっ!!」



振り向きざまに、背中から襲ってきた敵を、袈裟懸けに斬った。


その剣速はあまりに速く、彼らは肉が裂け、白い脂肪が見えた状態で倒れる。


そのあとで、だんだんと地面が赤く染まっていった。



「…………」



声も出ない。


そこにいる大男の浅葱色の羽織には、一滴の返り血も付いていなかった。


それどころか、汗ひとつかいていない。



これが沖田の、実力……。