幕末オオカミ



「ふ、えぇっ……」


あたしは渾身の力で総司から離れ、その場に座り込んだ。


確かに呼吸は少しずつ戻ってきたけど、今度は羞恥で死んでしまいそうだ。


だって……


沖田に……



乳、見られたぁぁぁぁぁ!!!




「うえぇっ……バカぁ……」



涙がボロボロと溢れる。


早く、着物を直そうとするのに。


手が震えて、うまくいかない。


もたもたしていると、頭上から声が降ってきた。



「……これ……使え」



ぽふん。


頭の上からあたしを覆うようにかけられたのは、沖田の大きな羽織だった。



「悪かったな……」



顔は見えないけど、羽織の向こうから、沖田のすまなさそうな声が聞こえてきて、その表情がわかったような気がした。


それが、混乱した思考を、温かく包む。


そうだ……


沖田に、他意はなかった。


ただあたしを、助けようとしただけなんだ。