幕末オオカミ



「に、にゃあ~ん……」


あたしは苦し紛れに、猫の鳴き真似をした。


「なんだ、猫か……」


「新見、もう良い。放っておけ」


ごまかせた!


うそぉ……大丈夫なの、あのタヌキとキツネ……


屋敷の中に笑い声が戻ると同時に。


あたしたちは、急いでその場を離れた。


沖田に手を引かれるまま走っていくと、前川邸の裏の林にたどり着いた。


「はぁ、はぁ……っ」


「これくらいで、息が乱れたか。
相当なまっているようだな」


「ば、バカぁ……っ!」


この動悸・息切れは、お前のせいだろっ、沖田総司!!


日の光の下で見た沖田は、本当に大きくて……


秋の風にさらわれた前髪の間から見えた、切れ長の目が、いつまでも、まっすぐに見れなかった。


つぶした胸だけが、正直に早い鼓動を打ち続け、彼を見つめていた。