幕末オオカミ



「またかいな……よう昼からあれだけ飲めるわ」


「しっ!壬生狼(ミブロ)に聞こえたら、首飛ばされんで!」


木の下を、町人が二人通っていった。


ひそひそと、しかし明らかに、芹沢たちへの文句を囁きながら……。


「誰だっ、今何か言ったのは!」


「まずい!」


「わっ!」


町人の声に気づいた新見が、座敷から出て縁側に顔をのぞかせた。


沖田に手を引かれ、あたしは慌てて木から飛び降りる。


着物が、木の葉や幹にこすれ、ザリザリと音を立てた。


「誰かいるのか!」


新見の声が聞こえた時……あたしたちは、木の幹の陰に隠れていた。