「総司、もうやめて。からかわないで」
「からかってねえよ。黙って聞け。
ちゃんと説明しとけって、土方さんに釘を刺されちまってるし」
総司はあたしの頭を撫で、話を続けてしまう。
「咳が出始めたのが、冬。
それに血が混じり始めたのが、春頃。
で、今に至る。
医者にもハッキリしたことはわからねぇみたいだが、狼化が体に負担をかけたんじゃないかっていうのが、斉藤の説だ。
山南さんの『狼の平均寿命説』と足して2で割った感じの原因だろうな」
「……夢じゃ、なかったんだ……」
「ああ。現実。
ほら……そんな、世界の終わりみたいな顔するなって」
本当なら、あたしが総司を慰めるべきなのに。
総司の方が落ち着いて、微笑んでいる。
あたしの頭を、優しくなでながら。
そんなの、おかしくない?
「あたしのせいでしょ?
陽炎との戦いで、ものすごい負担がかかったんでしょ?
それなのに、何も気づかなくて……ごめんね……」
これは現実なのだと認識した途端、涙と後悔が溢れ出す。
あたしが大人しく、大奥に帰っていれば。
ううん、最初から、大奥を出たりしなければ……



