幕末オオカミ



「黙っててって、何を……?」


「……聞いたんだろ、近藤先生と土方さんに……
俺の、体のことを……」



総司はいつになく、ゆっくり話す。



「……総司……」



手をのばせば、総司はそれをしっかりと握り返してくれる。


いつもの大きくて、温かい総司の手。


皮膚の感触、微かにする血のにおい……。


あぁ、本物の総司だ。


これは現実だ。


夢じゃない。


夢じゃなかった……。



「……楓……俺、な」


「…………」


「……そんなに長くは、もたないと思う」



言い聞かせるように、優しく、あたしの耳に入ってきた低音。


それは、あたしに対する、死刑宣告にも聞こえた。



「ずっとな、違和感はあったんだ。

人を斬って、狼になってを繰り返して……人間に戻っても、体と魂が別物みたいに、しっくりいかないなとは思ってた」



総司の言葉は、まるでさっきの台詞を忘れたように淡々としていた。


あたしはただ、黙ってその声を聞くしかできない。