幕末オオカミ





……見慣れた天井が、見えた。


いつも、目が覚めると見える、蔵の天井の木目。


あぁ、あたし寝てたんだ。


夢だったんだ、全部。


総司の体が悪いだなんて。


全部、悪い夢だったんだ……


目をこすりながら体を起こすと、そっと背中に手が添えられた。



「……大丈夫か?」


「そう、じ……?」



あたしを支えたのは、穏やかな顔をした総司だった。


総司の輪郭はぼやけることなく、目に写る。


まだ夢の中にいるようだった頭が、だんだんとはっきりしてくるのを感じた。



「何で……?」



総司がそこにいる理由がわからない。


どうして、総司の顔も、その周りの空間も、茜色に染まっているんだろう。


朝じゃないの?


あの任務も、その後聞こえた、話し合いも、夢じゃなかったの?


それとも、まだ夢の中にいるのかな。


ぼんやりしていると、総司があたしをのぞきこんで、言った。



「悪かったな、黙ってて……」



その顔は、どこかホッとしているように思えた。


もう隠し事をしなくて済む。


そう言っているようだった。