労咳患者は、大奥で一度見たことがある。
下働きの下女だった。
彼女は労咳を患い、隔離され、ある日一人で血をはいて、死んだ。
正しくは、血の混じった痰を吐き出す事ができず、それが喉を塞いで、息を止めた。
総司の袖に付いてた血は、まさか自分の口を拭って……
不意に、自分の体が震えだすのを感じる。
肩に置かれた局長の手に、力がこもった。
「大丈夫。
今、この面子で、総司を救う手だてを全力をあげて調べているから」
そんな局長の台詞も、あたしを安心させることができなかった。
だって、だって、皆、さっきまで、どうしたらいいか、わからないって……。
「いったい、いつから……
あぁ、あたし、何で何も気づかなかったんだろう……」
「君のせいじゃない。しっかりしろ」
「ねぇ、いつからっ?
総司は、総司はどうなるの……!?」
局長につかみかかると、その手を何者かがつかんだ。
見上げると同時に、副長があたしを見下ろし、局長から引き離す。



