幕末オオカミ



「陽炎……何を言ってるの?」


「わからないとでも思うの?
楓はあいつが好きなんでしょう?」



その声はぞっとするほど、冷たかった。


反論する暇もなく、陽炎はあたしを後方へ突き飛ばす。


よろける視線の先には、完全に狼化した総司が、獲物をにらんで喉を鳴らしていた。



「気が変わったら声かけてよ、楓!」



陽炎はそう言って、両手に炎の幻術をまとう。



「ま……って、やめて陽炎!!」



叫んだ時にはもう遅く、陽炎の手からは既に、総司に向かって炎の弾丸が飛びだしていた。



楓は、あいつが好きなんでしょう?


だから、あいつを殺せば。


一緒に、来てくれるよね。



陽炎の声はそんな意味をはらんで聞こえた。



「総司……っ!!」



炎の弾丸は、総司の足元に噛み付こうと爆音を立てる。


しかし総司はそれを、人のわざとは思えない速さで避けながら、陽炎の方へ突っ込んでいく。


それを突っ立って見ていたあたしの腕を、平助くんが引っ張った。



「楓、こっちへ!」