幕末オオカミ



それに応えて、総司は頭上を見上げた。



「しょうがねぇな……」



雲の切れ間から、冷たい月が顔をのぞかせる。



「なるべく、理性を残しておきたかったんだがな。

俺を怒らせたお前が悪いんだぜ……?」



そう言った瞬間、総司の骨がみし、と音を立て始めた。


黒髪の間から尖った耳が飛び出し、目が金色に変わっていく。



「へぇ……人狼か」



そういう陽炎の喉が、ごくりと鳴った。



「楓を……放せ……」



牙が生えかけた総司の口から出た言葉は、それが最後。


あとは、怒りに震えたうなり声に変わってしまった。



「楓、やめときなよ、あんな醜い男」


「……っ」



陽炎は後からあたしを拘束したまま、耳元で囁く。



「一緒にいたって幸せになんかなれないよ?

わかってるでしょ?

あいつと一緒にいるかぎり、お前の不安は尽きることはない」


「やめて……」


「お前は一生、あのバケモノの面倒が見れるの?」