幕末オオカミ



「汚ねっ!!」



平助くんが罵倒する。


着地したのは、また総司の前だった。


陽炎はあたしの顔に苦無を突きつける。



「動くな」


「……そのまま連れて行こうってのか。
そうは行かないぜ」


「わかってるよ。
あいつが今結界をはった。
あいつを殺さない限り、俺はここから出られない、でしょ?」



陽炎の声に混じって、キイイイイ、と耳鳴りのような音がする。


気づけば、斉藤先生の手に新しいお札が握られていた。


結界。


それは外界から切り離された空間。


あたしたちは、斉藤先生の作った空間の中に閉じ込められたんだ。



「俺はただ、お前の本当の力を見たいんだよ」


「…………」


「こうするのが早いと思ったんだけど、違ったかな?」



陽炎は苦無の先を、あたしの頬に食い込ませた。


ちくりと、薄い皮が破られた痛みが走る。



「チッ……」



総司は刀を抜かないまま、土方副長を見た。


副長はすぐに、小さくうなずく。