幕末オオカミ



陽炎の紫色の瞳が光る。


真実を見抜こうとするように。



「そう……いいよ。

ただの刀じゃ俺に勝てないって、わからせるだけだ」



ゆら、と陽炎の姿が揺れた。


その名のごとく、空間にとけ込み、透明のモヤになっていく。



「げっ、消えた!」


「静かにしねぇか平助!」



総司はその場から動かず、左手で鍔を押す。


そのまま前屈みになったと思うと、少しだけ刀身をのぞかせた刀を、すぐ抜けるように、右手を前にかまえた。


闇夜に溶け込んだ相手に、迂闊に攻撃はできない。


その瞬間、スキが生じてしまう。


総司が攻撃できる機会は……


陽炎と、衝突した時だけ。


五感を研ぎ澄ませ、総司が攻撃に備える。


しかし、陽炎が向かったのは、別の相手だった。



「!!」



突然、目の前の斉藤先生がいなくなった。


と思ったのもつかの間。


移動したのは自分の方だったと気づくのに時間はかからなかった。


陽炎はいつの間にかあたしの後に回り込み、その両腕であたしを抱いて跳んだんだ。