幕末オオカミ



「いいだろう、副長さん。
あの男と戦わせてくれよ」


「俺達じゃ不服か」


「そうじゃないよ。
ただ……すごく、気に入らない。

どうしてあいつは、楓の手を離さないわけ?」



陽炎はこちらをにらんだ。


その目にあるのは……怒りや恐怖じゃない。


それはあたしがまだよく知らない感情だった。



「陽炎……」


「いいだろう。総司、相手をしてやれ」


「はい」



土方副長は渋々納得し、総司に戦う許可を出した。


総司は、あたしの手を離す。


背中を向けて歩き出す直前、小さな声で聞かれた。



「楓」


「なに……?」


「……お前は俺に、勝ってほしいか?
それとも……負けてほしいか?」



冷たい北風に、総司の髪が揺れる。


総司が勝てば、陽炎は……多分死ぬ。


総司が負ければ……総司が死ぬ。


きっと、引き分けはない。


どちらかを、あたしに選べっていうの?