幕末オオカミ



陽炎は悔しげに、うなった。



「……情けはいらない」


「……そうか」


「っ、陽炎……っ」



話しかけたあたしの方を、陽炎は見つめた。



「楓が帰りたくないって言った時から、なんとなくこうなるような気がしてた」


「陽炎……お願い、副長の言うとおりに……」


「お断りだね。
幕府の犬ごときに情けをかけられて生きるなんて」



誇り高き純血の忍は、きっぱりとそう言い放った。



「選ぶよ。『このまま戦う』をね」


「…………」



平助くんと斉藤先生が刀をかまえる。


しかしそちらを見ずに、陽炎は言った。



「だけど、一つだけ副長さんに頼みがある」


「何だ」


「ずっと楓の手を握ってる、あの男とやりあいたい」



血がついた指が差したのは……


あたしの横にいる、総司だった。