「──っ!!」
平助くんの右手の光は、陽炎の体に吸い込まれることはなかった。
陽炎が咄嗟の判断で、身を引いたんだ。
平助くんの刀は、その忍装束と、腹の皮だけを切って、赤い花を夜空に舞わせた。
「……よく避けたね」
陽炎の方を振り向いた平助くんは、いつものように笑っていなかった。
獲物を捕らえられなかったことに、少なからず苛立っているようだ。
その目は刀と同じように、ぎらりと闇夜を見透かした。
「……お前達こそ……っ。
そういえばお前は前にも会ったな。
陰陽師だったのか」
陽炎が向いたのは、無事に立っていた斉藤先生の方だった。
「いや、俺は新撰組隊士、斉藤一。
陰陽道は……趣味だ」
「趣味……っ?
嘘つけっ、趣味で俺の攻撃が避けきれるはずが……っ」
「嘘だ。すまん。
しかし今は本当に、一剣士だ。陰陽師ではない」
斉藤先生、やっぱりタダ者じゃない……。
お札一枚で一瞬で結界を作り、あの強力な攻撃を避けちゃうなんて……
「でー、どうすんの?
もうお前に勝機はないよ。
思い切って、切腹する?」
星屑を散りばめたような刀の光は、そう言った平助くんの顔を明るく照らす。
斉藤先生・土方副長組と平助くんに挟まれるようになった陽炎。
その腹からは、血がポタポタと落ちていた。



