幕末オオカミ



瓦が崩れ、足場が悪くなったのか、陽炎はすとんと地上に着地した。



「やっと降りてきたな」



土方副長がにやりと笑う。


陽炎はそれを、紫色の瞳で見つめ返した。


緊張が、恐怖に変わっていく。


新撰組に残ると決めた時から、わかっていた。


それなのに、今でも、少しの楽観的な希望を持っていたことを思い知る。


陽炎が……殺される。


あたしはその意味を、やっと理解した。


陽炎は、あたしが大奥へ帰らない限り、殺される。



「陽炎……」



かつては仲間だった。


幼なじみと言っていいだろう。


一緒に野山を駆け回って、忍の訓練をした。


やがて純血の陽炎と混血のあたしは、思春期になったら会うのを禁じられた。


純血の者どうしで子供を残すため、他の女子に恋をしてはならぬと言うのが、村での暗黙の了解だった。



「……楓」


「…………」



あたしを呼ぶのは、総司だった。



「悪いけど、今さら心変わりしたって遅ぇぜ。
俺はお前を離さないから」



握った手に、痛いほど力が込められた。