幕末オオカミ



「防戦一方じゃ、刀が泣くよ!!」



陽炎の声が夜空に響く。


相変わらず煙に巻かれた境内で、三人の影が見えた。



「そりゃあそうだな!!」



土方副長の声が聞こえる。


そして……。


突然、三人の周りに突風が吹き荒れた。


まるで、竜巻のように。



「な……っ」



陽炎は屋根の上で、一瞬言葉を失う。



「なかなかやるようだからな。
俺達の力もみせてやろうじゃねぇか」



風は勢いを弱め、三人の周りを守るようにゆらりと揺れる。


巻き上げられた枯葉で、その動きがわかった。



「お前……妖術使いか!?」


「失礼な。陰陽道と言ってもらおう」



斉藤先生が言い返す。



「と言っても、俺は少し手ほどきをしたまで。
あとは副長の我流でしたね」


「妖術っていうか、鬼術と言ったほうが正しいみたい」


「うるせえよ、お前ら」



土方副長がそう言うと、平助くんはにこりと笑った。


まさか、あの風は土方副長が起こしたっていうの……!?