幕末オオカミ



「うらぁっ!!」



煙の中から土方副長の気合が聞こえ、次の瞬間には、空間を凪ぐ音と共に、煙の間から副長の顔が見えた。


剣で、煙をなぎ払ったんだ。



「副長!上です!」



斉藤先生の声に、全員が顔を上げる。


陽炎は再度、寺の屋根に上っていた。


あたしは着物を脱ぎ捨て、忍装束で苦無をかまえた。


そこで土方副長の声が、こちらに投げつけられる。



「総司、お前は俺が声をかけるまで下がってろ」


「土方さん、なんで……」


「小娘が傷つけられることはねぇと思うが、そいつは無鉄砲でいらねぇことばかりするからな。
お前が見張ってろ」


「なっ、副長!」


「うるせぇ小娘!下がってろって言ってんだ!!」



言葉の終わりで、総司がぐいとあたしの腕を引っ張った。


その足元で、ボン!とまた破裂音がする。


今度投げられたのは煙幕ではなく、火矢だった。



「言うとおりにしろ」


「でも……っ」



これは、あたしの戦いなのに。


見上げたあたしを、総司の切れ長の目が制する。



「土方さんは、俺にお前を守れって言ったんだ」