幕末オオカミ



「これは、帰らないっていう意味にとらえていいんだね、楓」



銀髪が月に照らされ、きらきらと光る。



「……そうだ」



あたしはうなずいた。



「あたしは、新撰組に残る。
大奥には、帰らない」



自分の決意が伝わるように、なるべく大きな声を出した。


陽炎はその端整な顔をわずかに歪める。



「……楓が帰ることが、上様のためになる。
それでもあんた達は、楓を渡さないって言うの?」



彼は初めて、土方副長に話しかけた。


土方副長はすぐに言い返す。



「お手もつけずに放っておかれた女だ。
今さら返せという理由を聞くまでは、渡せねえな」


「へぇ……理由次第では、返してくれるということ?」



陽炎は面白いものを見つけたような目で、土方副長を見つめた。