副長は立ち上がると、勢いよくふすまを開けた。


そして、振り返らずに、言った。



「……総司を頼むぞ、楓。

責任とって嫁にするなんてあいつが言ったのは、初めてなんだからな」



ぽつりと言って、そのまま消えていった。



「副長……」



総司を、頼むぞ。


その言葉に、全てが凝縮されているような気がした。



「あ……名前……」



いつもあたしをバカにして、『小娘』なんて言うのに。


副長……。


自分は表だって、総司を守れないから。


隊を仕切るのに、精一杯だから。


あたしに、その役目を託してくれたんだ……。



けど。


けど。


もーのすごく、誤解してると思うんですけど……。



『総司が、お前に、に決まってんだろ』



どうすりゃいいのよ。


出て行けなくなっちゃった……。


嘘だ、嘘だと思いながら。


あたしの胸は、奇妙な音を立て続けていた。