幕末オオカミ



「ったく……どいつもこいつも、こんなマヌケな小娘のどこがいいのか知らねぇが」


「はい?」


「お前が来てから、総司の雰囲気が変わったんだよ。

いや、平助も、もしかしたら斉藤もか」


「……意味がわかんないんですけど……」



はぁ、と副長はため息をついた。



「これだから、ガキは嫌いなんだ」



ガキって……。


いつの間にか副長への対抗心が、胸に戻ってくるのを感じる。



「あいつらは初めて、守るってことを知った。
それで、強くなったんだ」


「えーと……?」


「つまり、惚れてんだよ。

お前がいれば、お前を守ろうとするだろ。
お前の前では、武士として格好ついてなきゃならねえし。

何がなんでも、死ぬわけにはいかねえし」


「……誰が、誰に惚れてる、ですって……?」



聞き返すと、副長は大きな舌打ちをした。




「総司が、てめぇに、に決まってんじゃねえか」





……………………。





「ないないないないないないないないっ!!」




気づけば、あたしは全力で首を横に振っていた……。