幕末オオカミ



視界の端に、あたしに触れようとした手が、だらりと下ろされたのが見えた。



「食わねぇのは勝手だが、隊務に支障出すんじゃねぇぞ」



総司はくるりと振り向き、行ってしまう。


……うん、それでこそ1番隊組長。


あたしはだんだんとぼやける視界で、その背中を見送った。



大丈夫。


あたしがいなくても、皆がアンタの暴走を止めてくれるはず。


ごめんね。


約束したのに。


あたしが、アンタを見張っててやるって。


絶対、殺させないって。


約束したのにね。


ごめんね。


でも、もしあたしが原因で、幹部全員切腹なんてことになったら。


約束も何もないじゃない?


いつのまにか。


あたし、新撰組の皆が好きになっていたから。


総司。


アンタが、好きだから。


さよなら。


元気でね。



最悪、脱走に失敗して、切腹になったら。


アンタに介錯を頼むから。



さよなら……。


総司。