幕末オオカミ



だけど……。



すんなりそうできないのは、どうしてだろう。



このままここにいたら、きっと皆に迷惑がかかる。


ううん、もうかかってるのに。



「早く来ないと、朝餉を食いっぱぐれるぞ」


「あ、うん……ごめん」



隊を脱するは許さず。


背けば、切腹。


でも、捕まらなければ……。


あたしが姿を消せば、丸くおさまるはず。



「先に行ってて」



振り向いてくれた総司に、そう言う顔は、うつむいていた。


その目を見ちゃいけない。


その背中を、唇を、大きな手を。


見たら、離れられなくなってしまうから。



「……どうした。気分が悪いのか」



総司が近寄り、前髪をわけて額を触ろうとする。


あたしは、その大きな手を払いのけた。



「大丈夫」


「…………」


「ちょっと、食欲ないだけだから」