幕末オオカミ



「どうかしたのか」



総司はあたしの顔を見て、低い声できく。



「大丈夫。手がかじかんで、さらしを巻くのに手間取っただけ」


「……へぇ」


「……お前、今想像しただろ?」


「し、してねぇよ!!」



バカじゃねぇか、と言いながら総司は頭をがしがしと掻いた。



「……なあ、何でも言えよ」


「え?」


「その……昔の仲間に会って、心中穏やかじゃないだろ。

土方さんもめちゃくちゃなことばかり言うし……何か相談があったら、乗るから」


「……あ、ありがとう……」



ガラにもない発言で照れたらしい総司は、「別に」と素っ気無く返して、歩き出した。


心配してくれてるんだ……。


陽炎の声が頭で響く。


相談……したいけど。


あたしの血の話が公になったら、あの鬼副長にどんな利用をされるかわからない……



「…………」



あたしは、何を信じればいいんだろう。


こんな体で、どこへ行けばいいんだろう。


本当は、わかってる。


あたしは、ここを離れるべきだ。


大奥へ、帰るべきだ。