『楓……』



あたしを優しく呼ぶ声がする。


息が苦しい。


体中がだるい。


汗だくの体で、名前を呼ばれたあたしは、必死にまぶたを開ける。


そこに見えた、あたしの顔をのぞきこんだ人物は……



『母さん……?』



最後に見たときより、少し若い母さんだった。


なんで?


母さん、死んだんじゃなかったの?



『母さん……』


『大丈夫よ。じき、楽になるから』



自分の声も、自分じゃないみたいに高い。


ああ、これはあたしが子供の頃の夢なのか。


やけに現実的だな……。



『ごめんね……楓……』



遠くなっていく意識のすみに、母さんの懺悔が聞こえた気がした。