近藤は泣きながら、あたしに頬をすりつけてくる。
剃ったひげのあとが、頬に刺さって痛い。
こ、これってまさか、もらい泣き!?
「トシぃ、いいだろう、面倒みてやろうよぉぉぉ」
「近藤さん……
その話が本当なら、そいつは上様にたてついた謀反者ってことになるぜ?
そんなやつをかくまったと知れたら、俺たちだってどうなるか……」
「ううっ、トシの意地悪!鬼!
可哀想じゃないかぁぁ。
お前には血も涙もねぇってのか!?」
「……この、子供好きめ……」
近藤に泣きつかれ、土方は舌打ちをした。
「総司、どう思う」
「……反対です。女は、争いの種になる」
「だから、監察方でいいだろ!?
山崎くんは信頼できる男だし、それなら他の隊士に顔を合わせずに済むっ!」
「そんなに、うまくいきますかね……」
さすがの沖田も、近藤には強く言えないみたいだ。
腕を組み、「任せますよ」という視線を、土方に送った。
「とにかく!局長命令だ!
この子を今日から、監察方に配属するっ!!」
近藤は大きな声で、あたしの心を揺さぶった。
なんて、大きな人だろう……。
声じゃなくて、心が!
近藤の心が日本海なら、土方の心はおちょこぐらいだよ。