幕末オオカミ



「さぁ……わしにはもう失うものはない。
男らしく戦ってやろう」


「は……いい度胸じゃねぇか。
新見とは大違いだ。
見直したぜ、芹沢さんよ」


「お前は黙っておれ!」



恫喝された土方さんは、珍しく喉を詰まらせてしまった。


それほどの気迫が、芹沢にはあった。



「沖田……お前が相手をしてくれぬか」


「芹沢……先生……」


「先日の剣さばきも、見事であった。
一度、手合わせしてみたかったんじゃ」


「……光栄です」


「総司」


「土方さんは、手をださないでください」



そうして、俺と芹沢は腰に剣を差したまま、向かいあった。


じり、と互いの間合いをはかり、すきを狙う。


窓の向こうでは、雨音がいまだ続いていた。


ぴちょん、と屋根から一粒の雨音が落ちた瞬間──



「やあっ!!」



芹沢が、剣を抜く。


しかし、その刹那……


俺の剣は既に、鞘から芹沢の腹へと、滑り出ていた。