幕末オオカミ



雨の中、奸賊を装って闇に潜む俺達に、山崎監察が近づいてきた。



「楓くんからの報告。全員、眠ったそうです」


「そうか。行くぞ」


「母屋に芹沢、お梅、平山。
その他2名は離れだそうです」


「じゃあ、母屋には俺と総司が行く。
離れは山南さんと左之に頼む」


「承知」



そうして俺達は、雨の中を八木邸に向かって走った。


あいつ……逃げなかったのか。


任務をまっとうして、既に蔵に帰っただろうか。



そんな事を考えるうち、俺達はとうとう八木邸に到着し、二手に別れた。



俺と土方さんは、母屋に踏み込む。


物音に気づいた芹沢の部下、平山が布団の中で目を開ける。



「お、ま、ぁぁぁぁぁ……!!」



土方さんは、すぐに刀を抜き、布団の上から平山を一突きで絶命させた。



俺はその間に、芹沢の眠っている場所へ急ぐ。


事は一刻の猶予も許されない。



芹沢がいるという奥座敷の屏風を蹴飛ばし、布団の上に倒す。


しかしそこには平たい布団があるだけだった。