幕末オオカミ



「……何を見透かしてやがる……」



俺は斉藤が嫌いじゃない。


しかし、その底知れなさに不気味さを感じる時はある。


自分の心が読まれているような感覚が、不快だった。



「そーうーじっ!
暗い顔してんじゃねーよっ!」


「そうだー、飲め飲めー!!」


「永倉さん、左之さん!酔いすぎじゃ……」


「はー?
酔ってないお前が浮きすぎなんだよっ!」



こうして、宴会は順調に運ばれ、お開きになった時には、幹部は誰も酔った様子を見せなかった。



「芹沢派は……全員、帰ったな」



土方さんが、言った。



「今日は外泊解禁だ。
好きなところで遊んで来い」



その言葉に、隊士たちは歓声を上げた。


ここは島原、男達が遊んでいくにはもってこいの場所だ。


もちろんこの目的は、隊士達の日頃の憂さを晴らすためなんかじゃない。


屯所から、なるべく人を遠ざけるためだ。



さあ。



粛清が、始まる──。