もし、芹沢が自分から隊を抜けてくれたら……誰も、殺さずにすむ。
近藤局長も、悲しまずにすむ。
「お主、恋人がいないわりに、立派な口をたたくのう」
「……すみません」
おっしゃるとおりです。
「いや、いいんじゃ。
お梅がお主みたいな女子じゃったら、少しは違ったのかもしれぬ……」
「…………」
「お主に惚れられる男は、幸せじゃのう」
……そんなことありません。
あたしは、口も器量も悪いし、大奥から逃げた、罪人です。
それでも、あたしに惚れられたら幸せ?
笑っちゃうよね。
ねえ、沖田…………。
「いまの話は、聞かなかったことにしてくれ」
芹沢は、薄く笑いながら、言った。



