幕末オオカミ



「お前は、優しい子じゃのう」



芹沢は、そのぶっとい手で、あたしの頭をぐりぐりなでた。



「わしはな、もう、お梅さえいてくれれば、それでいいんじゃ」


「芹沢先生……」


「……わしが新撰組から離脱して、商売でもやりたいと言ったら、お梅はなんて言うかのう……」


「……!!」


「武士は、命がいくらあっても足りぬでのう……」



あやうく、くずきりの椀を落としそうになってしまった。


心臓が、奇妙な音を立てる。


芹沢は、お梅さんと生きるために、新撰組を抜けようとしているんだ……。



「私だったら、喜びます。
好きなお人が、私と長く一緒にいるために、そこまでしてくださったら」


「はは……しかし、手当がなくなってしまうでのう」


「お金なんか……!
好きな人のためなら、あたしが稼いでやりますよ!」