すぐに店を出て二番隊と別れる時、永倉先生があたしたちに声をかけた。
「土方さんが、たまには顔を出せって言ってたぜ。
慣れない土地での生活を心配してるんだろう。
じゃあ失礼します、芹沢先生」
「ふん」
芹沢は永倉先生と顔もあわせなかった。
それはそうだろう。
無理な借金をする現場を、見られちゃったんだから……。
「行くぞ」
「あ、はい」
芹沢はどすどすと八木邸とは逆の方向に歩いていく。
まだ何かあるのかなー。
しかし、さっきの永倉先生の言葉……
あれは暗に、土方副長が報告を待ってるって意味だよね……
あたしだって行きたいよ?
早く皆のところに帰りたいよ。
「何をぼんやりしておるか」
声をかけられ、やっと前を向く。
芹沢があたしを連れてきたのは、意外や意外、ただの甘味処だった。



